老人性難聴とは耳の老化現象による難聴です。加齢に伴い、通常、両方の耳に起こります。老人性難聴を発症する年齢には個人差が大きく、早い人では40歳代で現れ、年齢を重ねるにつれて徐々に進行します。難聴に耳鳴りの症状を伴うこともあります。耳鳴りの種類としては「キーン」という高音の耳鳴りが多いです。老人性難聴の治療は医学的治療が難しいですが、老人性難聴の最大の問題は、「耳が聞こえない」ことでコミュニケーションがとれずに孤立して精神機能が落ちていくことです。
老人性難聴の原因は聴覚伝導路全体の老化(生理的な変化)で、「感音性難聴」または「感音性難聴と伝音性難聴の混合性難聴」です。老人性難聴では、左右の耳の聴力が同じ程度に低下していくのが特徴です。内耳にある音の大きさや高低を感じ取るための感覚毛が次第に減少し、内耳神経や聴覚神経の細胞も減少していきます。そのため感音性難聴が徐々に現れます。気づかないことも多いのですが、中耳炎による伝音性難聴と合併した混合性難聴であることもあります。老人性難聴は難聴自体を治療し改善することは難しい聴覚障害ですが、伝音性難聴は医学的治療が可能ですし補聴器が大きな効果をあげます。老人だからといって諦めるのは早いです。検査をして適切な対処が必要です。
老人性難聴の症状の特徴としては、高音損失型難聴の症状(高い音から聞こえが悪くなり、次第に低い音も聞こえが悪くなる難聴の症状)や、リクルートメント現象(小さな音が聞こえないのに少し大きな音に対してうるさいと感じる)、感音性難聴の症状(音が歪んで聞こえるために言葉として理解しずらい・手術治療や補聴器では大きな効果が期待できない)ことの他に、聴覚障害があるために周りの人とコミュニケーションが上手くとれずに孤立してしまい精神機能が低下していくことが大きな問題になっています。
老人性難聴と間違えやすい障害もありますから注意が必要です。老人の耳が聞こえないことが即老人性難聴とはなりません。老人性難聴と紛らわしいものに、感覚性失語症・伝音性難聴・耳垢栓塞などがあります。感覚性失語症は適切なリハビリが必要です。伝音性難聴は、先にも述べたとおり伝音性難聴は医学的治療が可能ですし、補聴器の効果が発揮される難聴です。老人で意外に多いのが耳垢栓塞(外耳道が耳垢で塞がっている状態)です。耳垢が柔らかい人は注意が必要です。
老人性難聴が原因で精神機能が低下することが大きな問題になっています。老人性難聴が進むにつれて話すことに消極的になりがちになります。周囲の人の話す気力を引き出す努力や環境を整備するなどの姿勢が必要です。また、最近の補聴器も改良が重ねられていますから、「補聴器は雑音がうるさい」といわずに、補聴器の専門科に調節してもらうことで快適な使用ができるようになるはずです。老人性難聴の人への話し方にも心配りが大切です。老人性難聴の特徴の高音損失型難聴から、「老人は悪口だけはよく聞こえる」ともいわれるように比較的低い音は聞こえやすいですから、低めの声で話してください。話し手の表情は難聴の人にとっては大切ですから、正面から話すようにします。声が歪んで聞こえたり、2つ以上の音を聞き分けるのが難しくなりますから、できるだけ静かな場所で、一対一で、はっきり・ゆっくり話すことも大切です。老人性難聴では小さな音は聞きづらく、ちょっと大きな音はうるさく感じますから、聞こえないからといって大きな声で話しかけるのは避けます。老人性難聴は「耳が聞こえない」のであって「言っていることが理解できない」のではないのです。

